第2部・織都桐生の近代化遺産
4・「本物のまま残したい」 本一・本二まちづくりの会 2005/10/29
座敷蔵造りが特徴の江戸時代から続く玉上薬局は保存の願いを込めて今春修繕された
江戸から昭和の町家や土蔵などが残る桐生市本町一、二丁目の「本一・本二まちづくりの会」は10月13日、伝統的建造物群(伝建群)保存地区の川越市を視察する。地元と桐生市が協力する「まちうち再生総合支援事業」の一環で、直前の8日に勉強会を開き、町並みの最も強力な保存手段の伝建群を学ぶ。
同まちづくりの会の森寿作会長(65)は「まちづくりの選択肢の一つに伝建群もあることを川越でしっかり見てくる」と視察の狙いを語る。本町一、二丁目では文化庁が1993年に伝建群保存対策調査をしたが、同支援事業は「まず伝建ありき」の姿勢を抑え、景観地区、地区計画などのまちづくり手法を探ってきた。伝建群を学ぶ機会は今回が初めてとなる。
◎心意気を示す
市の窓口となる都市計画部は「用意できるまちづくりメニューはほとんど出そろう。今後は地元がビジョンをまとめることが必要」とボールをいったん返す。来年3月末の事業期間を延長して、地元の声をじっくり聞く。
桐生天満宮の門前に広がるまちには、明治・大正時代の森会長宅や、のこぎり屋根工場を活用した無鄰館など国の登録有形文化財がある。市文化財の有鄰館もあり、ほかにも文化財級の建物は多い。わたらせフィルムコミュション代表の山田耕司さん(38)は「生活の感じられる文化財や路地裏に、東京の映画製作者はみんな興味を示し、高く評価している」と話す。
県道に面して薬局を営む玉上常雄さん(70)は今春、地区で最も古い江戸時代からの店舗を修繕した。「30年前に改築した。今回は創建時の姿により近づけた」という。県や市の融資制度を活用したが、県道の拡幅を望まず、古い町並みを残す心意気を示した。
足かけ5年の同支援事業で「歴史的な町並みを本物のまま残したい」という希望が浮かび上がった。しかし、まちに残る遺産をどう活用するかはまとまっていない。伝建群を使って今の町をそのまま残すか、都市計画の手法を活用したまちづくりを進めるかなど、着地点の模索が続く。
県のシルクカントリーづくりで、西の国史跡の旧官営富岡製糸場に対抗する東の核に「本町一、二丁目の伝建群指定はぜひほしい」という文化財関係者の声もある。
◎あるべき姿を
町二丁目に設計事務所「空間工房」を構える大内栄さん(48)は「本町は桐生全体のまちづくりの中心になる。魅力的な建物を残し活用しながら、生活しやすいまちにしたい」と夢見る。森会長も「手法の話よりも、一・二丁目のあるべき姿を住民がどうつくり上げたいかを、本年度中にまとめたい」と意欲を示す。