絹の国の物語

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第5部・六合・赤岩の景観保存

5・「町並み保存」根付く 甘楽と桐生 2006/5/1

個人負担で改築され、城下町の雰囲気を高めている甘楽町小幡の梅沢さん宅の門
個人負担で改築され、城下町の雰囲気を高めている甘楽町小幡の梅沢さん宅の門

建物と町並みを一体として保存する国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)。4月21日に県内初の選定の答申を受けた六合村赤岩地区よりも以前に、甘楽町と桐生市でも重伝建の調査が行われたことがある。


◎城下町小幡

それぞれの事情で、ともに選定には至っていないが、町並みを大事に思う意識は住民にしっかりと根付いている。

甘楽町で調査の対象となったのは、武家屋敷や町家が並ぶ城下町、小幡地区。同町教委が主体となり1981、82年度、重伝建を視野に入れた調査や啓発活動を行った。

ところが同地区は、町が重点的に開発を進める都市計画区域でもあり、町役場内の意見は「保存」と「開発」で対立。住民の一部からも重伝建に慎重な声が上がり、取り組みは暗礁に乗り上げた。

「住民自身が景観を保存しようという気持ちが何より大切。小幡地区は行政が走り過ぎてしまった」。当時、同町教委で文化財を担当していた同町企画課補佐兼情報政策係長の中野哲也さん(50)は悔やむ。

ただ、重伝建にはなっていないものの、城下町小幡地区の景観は今もしっかりと残っている。同地区に住む梅沢儀一さん(87)は昨年春、自宅の門を改築。木としっくい壁の壮大な造りで、城下町の雰囲気を一層高めた。「町並みは大事。国の支援をもらわなくても、自分たちの手で残していく」と、梅沢さんは語る。住民一人一人が、城下町小幡を支えている。

◎織都に動き

生市では’93年、絹織物ののこぎり屋根工場や商家が並ぶ本町一、二丁目地区で調査が行われた。結果を受け、同市教委文化財保護課と住民が協調して保存運動を進めたが、小幡地区と同様に都市計画区域だったため、調整が難航し、重伝建への取り組みは振り出しに戻った。

それでも織都の景観保存を願う住民は2000年、本一・本二まちづくりの会を結成し、イベントや会合など地道な活動を重ねながら、町の将来像を考え合っている。

同会の中心メンバーは4月、「本一本二町づくり基本構想」の原案を作成した。「重伝建を重要なステップとし、古い建物や町並みを生かした町づくりを目指す」と会の方向性を定め、6月に開く総会で、全会員に重伝建選定の必要性を訴える。その後、基本構想を桐生市に提出し、賛同する新会員を募る予定だ。

「古い建物を残し、新しいビルなどの建設を防ぐには、重伝建しかない。自分たちの町の将来は、自分たちの手でしっかりと描きたい」。同会の森寿作会長(65)は強く訴える。

同地区は六合村赤岩地区とともに、本県の世界遺産登録運動の候補地。これからも町並みが残り、世界遺産の一角を担えるかどうかは、住民の気運にかかっている。