絹の国の物語

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第6部・島村を引き継ぐ

4・学習講座 共通認識形成の場 2006/8/30

境島村公民館で開かれる勉強会には、毎回多くの受講生が集まる
境島村公民館で開かれる勉強会には、毎回多くの受講生が集まる

毎週金曜日の午後七時半、境島村公民館(伊勢崎市境島村)のホールが、いっぱいになる。集まる人は約六十人。ぐんま島村蚕種の会が、七月上旬から始めた境島村郷土史学習講座で学ぶ人たちだ。いつも決まった顔触れが、日中の仕事の疲れも忘れて笑顔で駆け付ける。

学習講座は、蚕種の会が「島村の歴史」を学ぼうと、七月から十月まで合わせて十回計画した。蚕種の会の会員が自ら講師を務め、島村の歴史や蚕種・養蚕業、郷土の先人、文化財などを講義している。


◎誇れる歴史

「島村には他の地域にない貴重な物があること。誇れる歴史を持ち、立派な人物を世に送り出してきたこと。それを知ってもらいたかった」。蚕種の会は、学習講座を島村に対する共通認識を形成する場と位置付ける。毎回いすが足らないくらい集まる受講生に蚕種の会の会員で、境島村公民館の館長を務める栗原知彦さん(65)は目を細める。そして「みんな本当に熱心だ」と手応えを感じている。

受講生の多くは蚕種の会会員と島村地区の住民だが、隣接する市町村からも「島村」を学ぶために駆け付ける人がいる。

富岡製糸場世界遺産伝道師協会の伝道師、成田裕美子さん(55)は太田市粕川町(旧尾島町粕川)から参加する。島村から程近い旧尾島町大舘生まれ。利根川沿いにある同地区で実家は船問屋を営んでいた。生まれ育った大舘は島村と同じように利根川とのかかわりが深い。「島村を知りたい。島村のことも分かるだろう」と旧官営富岡製糸場について学ぶ伝道師になった。

「島村についてもっともっと知りたくて」と講座に出席してきた。蚕種の会会長の田島健一さんが(76)が講師を務めた時、会場に持ってきた「養蚕新論」の版木や田島啓太郎がイタリアから持ち帰った顕微鏡を夢中で写真に収めた。

◎たぎる思い

行政主導ではなく、住民が自発的に蚕種の会という団体をつくり、動きだしたことに多くの人が注目している。

伊勢崎市教委文化財保護課の板橋春夫主幹もその一人だ。「会員の胸の中には、引き継いできた島村をなんとかしたいという熱く、たぎるような情熱があるのでしょう。住民が自ら起こした行動は、必ず島村に対する地域の意識が盛り上がる契機になる」。板橋主幹の言葉にも熱がこもった。