絹の国の物語

絹の国の物語

第3部・碓氷製糸の挑戦

10・多彩な業種と協力 新商品 2005/12/19

碓氷製糸の展示室ではボディータオル「絹娘」などを販売。室内には衣類、化粧品など多彩な商品が並ぶ
碓氷製糸の展示室ではボディータオル「絹娘」などを販売。室内には衣類、化粧品など多彩な商品が並ぶ

碓氷製糸農業協同組合(松井田町新堀)事務所の隣にある作業場で、女性従業員が光沢ある布を箱詰めしている。絹織物販売部の阿部文江さん(51)は箱から取り出した布を見せながら言った。「ほら、触ってみてください。これが本当のシルクなんですよ」


◎ヒット

 1998年から販売を手掛けるボディータオル「絹娘(きぬっこ)」。自家生産した生糸「ぐんま200」をふんだんに使ったこのヒット商品が、現在でも次々と誕生している新商品開発の原点となっている。

碓氷製糸は1977年に絹織物部門を本格的に立ち上げ、呉服を主力に扱っていた。しかし、高級品だけに需要が大きく伸びず、90年代ごろから、当時組合長の茂木雅雄さん(75)と同部門担当の阿部さんは多くの人が簡単に購入できるような絹製品の開発を模索していた。

そんな試行錯誤を繰り返していた時期に、繊維製品製造を行うミヤマ全織(笠懸町)が生糸のレース編みボディータオルの試作品を持ち込んできた。「まるでレースみたいだった」。阿部さんはすぐに手応えを感じた。

その後、改良や開発を重ねた末にボディータオルは誕生した。当初は呉服に珍重されていた高級生糸の「新小石丸」を使用。お風呂に入れると、ガーゼのように柔らかく、それでいてしっかりと体を洗える機能性が高く評価された。

初年度に3ヶ月で約1250本を販売すると、2000年には約12000本の大台に。昨年は、ねんりんピックぐんまの記念品として扱われ、一気に年間約24000本を販売した。発売開始から今年11月までの累計は約68000本に達している。

「いきなりのヒット商品だった。初めは作っても作っても売れる状態。今も続く商品開発は、ここから始まったのかもしれない」。阿部さんは現在も衰えぬ人気を喜ぶ。

◎広告塔

ディータオルにヒントを得た碓氷製糸は多彩な業種と協力しながら次々と新商品の開発を進めた。

2000年には百貨店の高島屋(東京)と共同開発による絹製のベビー服を販売。このほか、独自のアイデアで靴下やベスト、セーター、サポーターなど衣類の製品化を進めた。

昨年から化粧品分野に進出、せっけんやローション、フェイスマスクなど女性をターゲットに販売網の拡大を図る。最近では小見製菓(高崎市)に依頼してシルクパウダーや桑の葉、桑の実を含んだあめを製造した。

今やボディータオルや絹織物を含む商品販売は碓氷製糸にとって欠かせない存在だ。

阿部さんは「本当に売りたいのは糸。でも、ほかの商品を売ることで糸を消費することができる。商品販売は『碓氷製糸』の名を売る広告塔としての役目を果たしている」と言葉に力を込める。