絹人往来

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■4・遺伝学

前日本絹の里館長 田島弥太郎さん(91)
前日本絹の里館長 田島弥太郎さん(91

一九九八年秋のこと。遺伝学者の田島弥太郎さん(91)=東京都国分寺市=は、オープンを数カ月後に控えた「日本絹の里」(群馬町金古)の館長に就いてほしいとの申し出を県から受けた。当時八十四歳。研究者として第一線を退いてから十年以上がたっていた。田島さんは予期しなかった“ラブコール”に喜び、「蚕を研究している人間として、郷里に最後のご奉公をさせていただきたい」と快諾した。

田島さんは蚕種業で栄えた伊勢崎市境島村(旧境町島村)の出身。島村は田島さんのほか、遺伝学者の橋本春雄(一九〇四―七六年)ら多くの学者、医師らを輩出している。

利根川沿いの一地域から、なぜこのよう多彩な人材が生まれたのか。答えは島村で栄えた蚕種業とキリスト教に見ることができる。

(2005年6月19日掲載)