絹人往来

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■64・機拵え

岡部機拵所所長 岡部克己さん
岡部機拵所所長 岡部克己さん

桐生繊維大学で今年も「機(はた)拵(ごしら)え」の講義を受け持つ。桐生市内の繊維関連企業で働く若者たちに、紋織りの生命線を支える技術を伝えるためだ。

講師となる岡部克己さん(70)=同市広沢町=は「もう八年になる。後継者はほとんどなく、機拵えの技術者は少なくなるばかり。天然記念物の『トキ』のように再生したくて、頑張っている」と心の内を吐露する。

稼働する織機は、数千本の経(たて)糸が川の流れのようにきれいに並び、上下に開口した経糸の間に緯(よこ)糸を乗せたシャットル「杼(ひ)」が行き交う。織物工場の「当たり前」の光景を作り上げるのが機拵えの仕事だ。

機織りの前工程の最終段階に当たる。「織り始まれば、作業の大半は終わり」と言われ、大切なセクションであることは織物関係者の常識だ。

「意匠や紋紙が紋織りの『頭脳』なら、機拵えは『骨』であり『血管』に当たる。紋織物という体を作り上げるのになくてはならない工程です」

(2006年10月29日掲載)