■40・日本刺繍
工芸作家 飯郷 明子さん
先月まで日本絹の里(高崎市)で開催された工芸展で、繊細な刺繍(ししゅう)が来場者に注目された。「刺繍絵画」と紹介された作品は、タンポポの綿毛が風に乗って運ばれていく姿や、陽光の中で凜(りん)と伸びるナズナの姿を、まるで日本画のように描いていた。制作したのは、二年前から安中市松井田町にアトリエを構える飯郷(いいごう)明子さん(59)だ。
前橋市出身。高校生のころから、工芸作家になることを夢見ていた。卒業後、染め物、レザークラフトなどに挑戦したが夢中になれず、三十歳を過ぎてようやく巡り合ったのが日本刺繍だった。「絹糸は刺す角度や光の当たり方で色が変化する。繊細な表現もでき、一本の線を引くのとは違う存在感を出せる」と魅力にはまった。
(2006年5月7日掲載)