絹人往来

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■8・文化財

「桐生明治館」大改修を担当伊藤晋介さん(58)
「桐生明治館」大改修を担当伊藤晋介さん(58)

桐生市相生町の国重要文化財「桐生明治館」は左右対称の白い外観が特徴のハイカラな建物だ。一階には二十年前の大改修をきっかけに設置された市営の喫茶店がある。国重文の活用モデルケースとして大きな反響を呼んだ。その大改修を桐生市教委の伊藤晋介さん(58)=同市織姫町=は担当した。

文化庁から「保存修理して何に使うのか」と再三、考えを求められた。 「資料館にします」
「誰も来ない。思い切ってレストランでも造ったらどうか」 「火はまずいでしょ」
「護摩をたいたり、ろうそくを置いたり、かがり火を燃やす神社仏閣はいくらでもある」

当時の文化庁の、文化財保存活用に対する積極的な姿勢が強く記憶に残る。「計画変更で当初予算の一億円では足りなくなった。国からの増額などで改修に三億円かけた。財政難の今ではとても考えられないことです」。一職員として、国との交渉の矢面に立った。

(2005年7月24日掲載)