絹人往来

絹人往来

■34・桐生織

伝統工芸士 高橋 康郎さん
伝統工芸士  高橋 康郎さん

和紙のこよりを織り込んだ夏向きの帯地が、二月に京都と東京でそれぞれ紹介された。白やベージュ、あい、こげ茶など七色と、四角、三角、丸の三種類の模様を組み合わせた清涼感漂う、さわやかな作品群に、玄人筋からも「形になってきた」の評価を得た。

製作したのは桐生織伝統工芸士で高光織物社長の高橋康郎さん(44)=桐生市境野町。桐生和紙と絹糸の相性の良さに気づいてから丸九年。従来の手織りから離れ、桐生織の技法の一つ綟(もじ)り織りを使って、今回初めてジャカード織りで和紙を用いた帯を仕上げた。

十五、十六日にも東京・青山で作品を紹介する。「自分の作品を見てもらえる機会は大切にしたい。和紙を使う織物の未来が見えてきた」。絹やポリエステルの織物とはひと味違う、和紙の演出する「照り」「温かさ」「凹凸感」に、わが子のような愛(いと)おしさを感じるようになった。

(2006年3月12日掲載)