絹人往来

絹人往来

■57・縮緬

人形作家、竹本京さん
人形作家、竹本京さん

古い縮緬(ちりめん)の布との対話から、人形作りは始まる。

本来、人形が先にあって着物を着せるが、私の場合、順序が逆。二百年、百五十年の歴史を乗り越えてきた布にはパワーがある。それにはさみを入れるのだから、その布をいちばん上手に生かせる方法を考える」

人形作家、竹本京さん(58)=高崎市中居町=は、素材となる江戸縮緬の古裂(こぎれ)へのこだわりを口にする。

「粘土と桐(きり)の粉で形作ったボディーに皮膚となる白い縮緬をかぶせ、軽く目鼻立ちを入れると突然、生き生きとした人形が現れる。その瞬間が好き。『思わず、あなたはこういう顔をしてたの』と話し掛けてしまう」。蚕がはき出した絹に包まれて、人形は輝き出す。

(2006年9月10日掲載)