絹人往来

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■53・蚕太

門倉メリヤス社長 門倉 重行さん
門倉メリヤス社長 門倉 重行さん

絹特有の光沢と、絹とは思えない強い生地の腰。前橋市日吉町のニット製造会社、門倉メリヤスが作るセーターは、絹の常識を超えた二つの特徴を持っている。その秘密は、家蚕(かさん)で世界一太い群馬オリジナル蚕品種「蚕太(さんた)」。同社と県蚕業試験場が二人三脚で開発した。「理想の素材を追い求め、十五年目にようやくたどり着いた念願の生糸。ニットにこれほどあう糸はない」。門倉重行社長(59)は自信を持って断言する。

九州の大学を卒業後、婦人服問屋に十年間勤務。結婚を機に、洋服製造を手掛ける妻の実家の同社で働き始めた。

作っていたのは綿や化学繊維のショーツやベストなど。「誰でも作れる単純で安い商品ばかり。競争が大変。いい物を作らないと、これから先は生き残れないんじゃないか」。一念発起し、洋服作りを素材選びからやり直した。

(2006年8月13日掲載)