■69・ネクタイ
ファブテックス常務 伊田 俊一さん
「ネクタイは「絹百パーセント」が当たり前になった。販売競争の最前線にいるネクタイメーカー常務、伊田俊一さん(56)桐生市堤町は「絹とアセテートなどの交織品が主流だった量販店は、好景気のバブルに向かって絹製品に純化していった。高級品志向の流れに乗って出荷ベースで九〇%が純粋の絹製品となった」とバブル期の業界の状況を思い返す。
絹百パーセントは景気の後退したバブル後もすっかり定着。「ブランド商品を中心にデパート向けの正絹のネクタイも出荷しています」。和装をはじめ絹需要が減る中、ネクタイ市場は絹製品の魅力をアピールする大舞台となっている。
市場原理だけが支配する販売合戦の中で、「安い絹を使った安価な中国製品が脅威だった。どこまで単価が落とせるか。メーカーとして対応が問われた」。かつての不安な日々を振り返る。
怖さに「おびえていても仕方ない」と中国に向かった。ネクタイの生産現場を見て回り、中国で「できること」を確認。「日本で作れて、中国でできないことがいっぱいあることに気づき、不安はなくなった」。六、七年前のことだ。
(2006年12月3日掲載)