絹人往来

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■31・江戸友禅

染色家 永井 與子さん
染色家 永井 與子さん

当時の内弟子は中学卒業後になるケースが多く、永井さんのように高卒は珍しかった。仲間からいじめに遭い、環境になじむことができない日々。加えて、金銭的な余裕もないため、十分な食事をとれず、わずか一年で二十キロも体重が減った。

だが、一年間の厳しい下積みを終えると、筆で色を塗ることを許された。作業場では熊谷氏が直接、染料作りの指導に当たった。「先生は魔法のように色を作ってくれた。本当に友禅がおもしろいと思った」と振り返る。

熊谷氏のもとで四年ほど修業を積んだ後、二十四歳で結婚。本格的な作業からしばらく離れていたが、情熱を抑えきれずに四十六歳で再開を決意した。翌年には「まるっきり自分が知らない土地」を求めて本県の高崎市へ引っ越し、五年ほど前から松井田町で生活を始めている。

(2006年2月5日掲載)