絹人往来

絹人往来

■70・指導員

JA利根沼田職員 大竹 重光さん
JA利根沼田職員 大竹 重光さん

昨年春、JA利根沼田の大竹重光さん(56)=沼田市薄根町=は十五年ぶりに蚕業技術員(養蚕指導員)に復帰した。前任者が定年を迎え、再び白羽の矢が立った。胸中は複雑だった。養蚕から離れた時、再び戻ることはないという気持ちで、新たな仕事に打ち込んできた。「この年になって、また戻るなんて…」。割り切れない気持ちだった。

だが、養蚕農家を訪ねると、養蚕を守り続けた人たちが温かく迎えてくれた。「またお世話になります」。あいさつするころには、わだかまりは忘れていた。養蚕の風景はあのころと少しも変わっていなかった。

沼田市の養蚕農家に生まれた。祖父の時代、実家は蚕種の製造販売を手掛け、父も蚕種会社に勤めていた。物心が付いたときには、家も地域も養蚕一色。幼年期から養蚕の話を聞いて育ったため、いつしか自分も養蚕の道に進むと思っていた。

(2006年12月10日掲載)