■44・指導者
桐生織塾塾長 武藤 和夫さん
梅田の山が緑をたたえている。初夏の日差しが降り注ぐ金沢峠への急坂に沿って、黒い板塀に囲まれた古い大きな民家がある。桐生織塾の塾長、武藤和夫さん(75)=桐生市西久方町=は十五年余り、身に付けた織物の技術や魅力を、この民家で伝えてきた。
玄関を入って右側の部屋に、手機五台が据えられている。すべての手機に織りかけの生地がかかる。思い思いの作品に挑戦する、市内に住む五人の女性たちの“仕事場”だ。
「みんなが手機で織っているのが楽しい。ものづくりは人だからこそできる。織り方を工夫し、道具を作って、新しい織物をつくる。人の知恵が詰まっている」
訪れる人がいて、にぎやかな時を過ごすのが大好きだ。いろりを囲んで会話が弾むこともある。病のために発声が不自由になったが、手づくりの魅力を熱心に語る武藤さんの姿勢は、来訪者の心の奥底に響く。
(2006年6月4日掲載)