絹人往来

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■43・稚蚕

はぐくみ農協職員 清水 良雄さん
はぐくみ農協職員 清水 良雄さん

新旧の住宅と畑が入り交じる高崎市金古町。アーチ型の屋根をしたはぐくみ農業協同組合の稚ちさん蚕人工飼育所で十六日、清水良雄さん(51)=榛名町宮沢=は額に汗をにじませながら、蚕の成育状況に目を光らせていた。室温二八・五度。湿度85%。人間には蒸し暑いが、生まれたばかりの稚蚕(ちさん)には理想的な環境だ。

「きちんと育てて当たり前。失敗したら一大事になる。蚕が病気にならないか、成長がそろうか、心配でならない」。稚蚕飼育に携わって三十年になるが、毎年春蚕が始まる五月上旬から、晩秋蚕が終わる十月上旬まで、気持ちの休まる日はない。

蚕は卵から生まれると一齢。四回の休眠(脱皮)で五齢となった後、糸を吐いて繭を作る。その三十日余りのうち、卵から三齢までの十一日間は、蚕病対策や温度、湿度の管理が特に難しいため、多くの農家が農協の稚蚕飼育所に飼育を委託している。

(2006年5月28日掲載)