絹人往来

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■67・手加工

指物師 吉沢 良和さん
指物師 吉沢 良和さん

「指物師として品の良い家具作りを心掛けている。板を薄くしても狂いの少ない桑は、ここぞというときに使いたい材料。思った通りに収まってくれるので、安心して仕上がり品をお客さんに渡せる」

沼田市戸神町に工房を構える吉沢良和さん(36)は、養蚕とは切っても切れない桑の木などを使って手加工の家具作りに取り組む。養蚕の盛んな地域で桑畑を身近に見ながら育ったこともあり、桑に対する思い入れは人一倍強い。

「養蚕をする人が少なくなり、桑畑が減っていく。同じように指物師もどんどんいなくなっている。寂しく感じるが、伝統を守るため誇りを持って技を磨き、養蚕県群馬を象徴する桑の魅力をアピールしたい」と意気込む。

指し物を始めたのは祖父の代。吉沢さんは父の仕事場を遊び場として育ち、小学生のころには「将来指物師になる」と決めていたという。「職人たちにかわいがられ、くぎやトンカチで遊ぶのが楽しくて仕方がなかった」。懐かしそうに当時を思い起こす。

(2006年11月19日掲載)