絹人往来

絹人往来

■19・着物

染織家 芝崎 重一さん(67)
染織家 芝崎 重一さん(67)

農家の母が、娘のために織る着物―。伊勢崎市長沼町の染織家、芝崎重一さん(67)の原点はそこにある。「着物は美術品じゃない。着るためのものだ。着心地良く、温(ぬく)もりがあって、何より人々が日常使いできる値段でなくちゃならない」。静かな口調は次第に熱を帯び、心に刻んだ固い信念を語り始めた。

養蚕農家の生まれ。家業の手伝いなどいくつかの仕事を経て、二十歳のころ、埼玉県本庄市の機屋へ奉公に出た。「職業を選んでいられない時代。働く先が、たまたま機屋だった」。偶然の出合いが、その後の人生を大きく変えた。

(2005年10月30日掲載)