■60・禁色
日本古代紫草染工房主宰 石川貴啓さん
昨年の愛知万博で、染色家の石川貴啓さん(55)=沼田市利根町穴原=は紫一色のファッションショーを仕掛けた。紫草(むらさき)染によって彩られた衣装をまとったモデルたちが次々とステージに現れると、観客は神秘的な色彩に目を奪われた。フィナーレでは大きな拍手に迎えられた。「十年ひと昔と言うが、あきらめないで良かった」。万感の思いだった。
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北海道出身。中央大中退後、都内でテキスタイルやファッションデザインを手掛けていた。三十年前、ある大学教授から紫草のことを聞いた。紫草は小さな白い花をつける多年草で、万葉集に詠まれるなど日本人に親しまれてきた。教授は紫草が日本伝統の文化であることを説き、ぜひファッションの世界に生かしてほしいと語った。
(2006年10月1日掲載)