絹人往来

絹人往来

■68・商人

小川屋社長 荒木 俊さん
小川屋社長 荒木  俊さん

前橋市の中央通り商店街。創業百三十一年の老舗呉服店「小川屋」で九月、前橋茶道会の茶会が開かれた。

全国有数の広さを誇る店内で、着物姿の女性六百人が茶をたしなみ、展示された古い茶道具を眺めながら語り合い、和やかなひとときを過ごした。

商店街に着物姿の人々があふれた昭和三、四十年代の光景がよみがえった。「日本の伝統文化を大切に思う心を広めたい。呉服店もその役割を担うべきだ」。茶会の開催を呼び掛けた同店社長の荒木俊さん(63)=同市千代田町=は、確かな手応えを感じていた。

小川屋の創業は一八七五(明治八)年。一九四五年の前橋空襲時、家族は疎開していて難を逃れたが、店は全焼した。復員した父が、一から再建した。「良品廉価。いいものを安く売る」。父のモットーが客の信頼を築き、やがて市内トップの座に昇りつめた。

(2006年11月26日掲載)