絹人往来

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機織り指導 “魅力”伝える喜び 福原知栄子さん(58) 前橋市大利根町 掲載日:2007/3/14


高崎市歴史民俗資料館で機織りの実演、指導にあたる福原さん
高崎市歴史民俗資料館で機織りの実演、指導にあたる福原さん

 高崎市歴史民俗資料館の一室に機織り機が並ぶ。地元の同市上滝町をはじめ市内でかつて使われた10機が展示され、機織りの実演、指導を行っている。
 「もの作りは楽しい。まったくの手作業で、糸の綜絖(そうこう)(縦糸を上糸と下糸に分け、間に杼(ひ)の通り道を作る道具)も、金具に引っかける金綜絖でなく、糸でつった糸綜絖でしている。糸の方がシルクを織るのに、あたりが軟らかいと教えられた。昔のやり方を受け継ぎ、昔ながらの道具を使っている」
 富岡市内の農家で生まれ育った。子供のころ、蚕のくず繭で祖母に着物を織ってもらった思い出がある。機織りの経験はなく、市文化財保護賞を受賞した江原トヨさん(上滝町、2005年に95歳で死去)に手ほどきを受けた。
 「12年ほど前、江原さんの機織りを見学したのがきっかけ。最初のうちは切れた絹糸をつなぐだけで一日が終わってしまうこともあった。作業は大変でも、これがライフワークになったらいいなあという気持ちの方が大きかった。7、8年ほど前に江原さんが体調を崩されてからは、自力でやるしかないと、教わったことを仲間と思い出しながらやってきた。作業の6割が機にかけるまでの下準備だが、糸が布になっていくところに一番の魅力を感じる」
 2001年の国民文化祭では、前橋・群馬会館で開かれた「一郷一学シンポジウム」で機織りを実演した。現在は後継者の育成にも取り組む。
 「団塊の世代の人から、機織りに関心があっても本格的に取り組むには気が引けるという声を聞く。卓上の簡易な織り機を使って、気軽に楽しめる機織りもいつか教えてみたい」
 機織りの実演は同資料館の人気コーナー。市内外の小学校やデイサービスセンターなどから見学者が絶えない。
 「(高崎)滝川小4年生の社会科見学が6日に行われ、その中に江原さんのひ孫さん(江原雅樹君)がいた。私がその子に『機織りを教えてあげられるのも、天国に行ったひいおばあちゃんが教えてくれたからだよ』と話すと、にこにこしていた。こんなこともあるのかな、こうやってバトンタッチしていくのかなと思い、とてもうれしくなった」

(高崎支社 関口雅弘)