絹人往来

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世界遺産 登録へ地道にPR 堀口 直行さん(45) 甘楽町白倉 掲載日:2007/08/04


車両にステッカーを張るなど地元企業として世界遺産登録運動を盛り上げる堀口さん
車両にステッカーを張るなど地元企業として世界遺産登録運動を盛り上げる堀口さん

 上信ハイヤー(本社・高崎市江木町)の社長に就任した昨年から、「富岡製糸場を世界遺産に」のロゴ入りステッカーを全車両に掲示した。富岡市から運行委託を受ける乗り合いタクシーの車両はレンガ模様に飾った。運転手全員に製糸場のパンフを配り、歴史や施設の概要を学ばせた。
 「地元に密着した企業として少しでも世界遺産登録運動に貢献したいと考えた」
 今年7月には、旧官営富岡製糸場を訪れる観光客をうまく案内できるようにと、運転手50人と一緒に工場を見学し、周辺を散策した。
 「製糸場の近くを通っても中に入ったことがない人もいた。自分の目で確かめて説明した方が内容が濃くなる。タクシー運転手がその土地を1番知っていると思われるから、その期待に応えたい」
 下仁田町の農家出身。子供のころ、繭の運搬やけばを取るなど実家の養蚕作業を手伝った。見慣れたれんが造りの建物は愛着を感じる。
 「最近、内部を見学できるようになり、当時の状態のまま保存されているのを知った。150メートルの間に柱が1つもないという説明を受けて、産業遺産としての貴重さを再確認した」
 高校卒業後に入社した上信電鉄では、臨時列車で製糸場を見学するツアーを企画した。出向先の上信ハイヤーでも業務で運動を盛り上げる。地元住民としても、世界遺産登録運動に高い関心をもっている。
 「暫定リスト入りしてから、製糸場や絹産業遺構群の施設を訪れるお客さまが増え、社業にもプラスに働いている。タクシーは電車と違い、乗客と直接触れ合うため、PR効果は高いはず」
 世界遺産登録は最短でも2010年。「ゴール」を目指して地道な活動を継続する必要性を感じている。
 「石見銀山遺跡(島根県大田市)が登録されたのを見て、頑張り次第で可能なんだと思った。これから、社員と一層協力してアピールしてきたい。群馬の玄関口で乗客数が多い高崎地区で同業他社に呼び掛けて、業界全体で運動を盛り上げるようにできれば」

(高崎支社 多田素生)