絹人往来

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真綿のわらじ 1足編むのに繭500個 峰川 みどりさん(76) 沼田市上発知町 掲載日:2007/06/26


「真綿のわらじは温かくて、長持ちする」と語る峰川さん
「真綿のわらじは温かくて、長持ちする」と語る峰川さん

 10年前から真綿を使ってわらじを作り、知人や友人にプレゼントしている。スリッパの代わりに室内で履くと足元が温かく、意外と長持ちする上、履き続けると「足の裏がすべすべになる」と好評だ。
 「ひ孫の誕生日記念にと作ったのがきっかけ。昔は冬になるとなわや俵を編んだので、わら細工は得意だった。多くの人から『ぜひほしい』と求められるが、材料の繭が高いのですぐには難しいですね」
 近くの養蚕農家から繭を譲り受け、これを自らゆでて水に浸した後、白く広がった絹糸を30センチ四方の真綿にする。実家が養蚕農家だったので、真綿の作り方は17、8歳のころ、見よう見まねで覚えたという。大人のわらじを1足作るには10枚程度の真綿が必要。これは、繭約500個分に相当する。
 「うちも30年ほど前まで養蚕をしていて、寝る場所まで蚕を飼っていた。6年前に胃の手術をして、時々腹が痛むが、真綿を巻いておくと温かくなって、不思議と痛みが和らぐ。繭の不思議さとありがたさは身にしみて分かってます」
 以前は自分の足にひもを引っかけて編んでいたが、現在は板にくぎ4本を打ち付けた特製の道具を使用している。真綿を少しずつはがして棒状に伸ばした後、一つ一つ編み込む。真綿に凹凸ができないように一気に伸ばすのがこつだ。
 「しっかり伸ばして、端を抑えないとすぐふわふわして、履き心地が悪くなる。以前、東京から『作り方を習いたい』とやってきた人が1日かけて編んでいたが、思い通りにはならなかった」
 鼻緒は衣類の端切れを活用。芯(しん)になるビニールロープに真綿を巻き付けて、その上から端切れを巻き付ける。芯がある方が鼻緒がしっかりして履きやすいという。
 「よく『おみやげにして売ったらどうか』と言われるが、1日に2足作るのがやっと。材料費も高いし、商売にはならない。作り方はいくらでも教えますが、1番難しいのは最初と最後の結び方。これだけは実際にやってみないと分からないですよ」

(沼田支局 金子一男)