絹人往来

絹人往来

刺しゅう 絹糸で描く繊細な絵 清水 正子さん(72) 高崎市和田多中町 掲載日:2007/09/12


「絹糸のやわらかさ、肌触り、美しさに魅せられた」と話す清水さん
「絹糸のやわらかさ、肌触り、美しさに魅せられた」と話す清水さん

 「絹糸のやわらかさ、肌触り、美しさの虜(とりこ)になった」
 50年以上にわたって、常に刺しゅうがそばにあった。魅力を語る言葉は尽きない。
 「縫い目の方向の違いと絹に光沢があることで、見る角度によって作品がさまざまな姿を見せてくれる」
 制作しているのは刺しゅうの絵画。下地の上に右手、下に左手を構え、下地に刺した針を1回1回抜き取る「両手刺し」で、絹の下地に染めた絹糸を縫い付けて絵を描く。細い糸、太い糸を使い分け、複雑な模様を仕上げる。
 「想像した色を出すために、糸も下地も自分で染めるから染織の技術が必要。下絵は水彩絵の具で描く。刺しゅうは総合的な知識がないといけない」
 1953年に高崎女子高から女子美術短期大服飾科に進学、刺しゅうを学んだ。中学生のころから、少女雑誌などに載っていた洋服を見て服を作るのが好きだったという。
 卒業後も、衣装製作の仕事などをしながら研究生として同大で学んだ。62年ごろ、同大服飾科に刺しゅう専攻ができると、翌年から助手として勤め始めた。
 「初めは1、2年やったら辞めようという軽い気持ちだった。いつの間にかのめり込んでいた」
 50歳ほどで教授になり、大勢の学生に刺しゅうを教えた。退職した今でも、昔の教え子が指導を求めて訪ねてくる。
 10月の展覧会に向けて制作中の作品「北の大地」は、小学4年から中学2年まで住んでいた北海道の景色を再現した。
 「夕方、雄大な空と草原がだんだんとオレンジ色に染まっていく様子を表現した」
 縦73センチ、横100センチの絹の下地いっぱいに、色彩豊かな刺しゅうが施されている。
 大学に勤めていたころから、ぐんま女流美術協会に所属、年1回の作品展に出品してきた。現在は副代表を務め、会の発展に力を注ぐなど精力的に活動している。
 今は教授時代と比べて時間に余裕が生まれ、思うような制作ができるという。
 「やわらかい絹糸のように、優しく生きたい。優しい気持ちで美しい作品を作りたい」

(高崎支社 今泉勇人)