絹人往来

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古布再生 眠っている絹で創作 上原 孝子さん(64) 富岡市神成 掲載日:2008/03/29


リメークした着物を身に着け、絹の小物を手に「古民具再生」を語る上原さん
リメークした着物を身に着け、絹の小物を手に「古民具再生」を語る
上原さん

 「目覚めて居間に行くと、『さわさわ』と蚕が桑を食べる心地よい音が聞こえたのを時々思い出す。その度に繭を糸にし、夕暮れ時になっても両手両足を使って機を織っていた祖母の姿が目に浮かぶ」
 小学6年生の時に作ってもらった絹の着物は50年以上が過ぎた今でも大切にしている。
 「昔は機織りが嫌いだったけど、今なら祖母の気持ちが分かる。まだ絹とかかわりを持ち続けているのは、きっとあのころの記憶があるから」
 教員を定年退職後、しばらくして富岡市内の社会教育館の館長となった。2006年から「古民具再生、捨てればごみ、再生でアート」をテーマに講座を開始。月に最低二つは絹の古布(こふ)を活用した講座を開いている。
 「古い絹を使ったおひなさまや動物の小物作り、タンスに眠っている着物や羽織をエプロンドレスやロングスカートなどにリメークする講座は毎月人気。募集を始めて三十分足らずで定員になることもある」
 参加者は40―80代の女性が中心。募集は主に市民が対象だが、市外から訪れる人も少なくない。「市の広報紙に載せているだけなのに、口コミで広がって県外から応募してくれる人もいる。絹のすばらしさを大勢の人が分かってくれている証拠」と声を弾ませる。
 講座ではアドバイザーとして教える立場になることが多いが、一緒に参加することも忘れない。「自分も楽しむのが大事。そうじゃないと、長続きしないでしょ」
 同館の一室は講座で作った絹の小物、布絵などであふれている。普段身に着けている上着も自分で古着をリメークした。「軽くて暖かい」お気に入りの一つだ。
 11月にはリメークした作品のファッションショーを同館で開く予定。「自分で作ったものを着て歩くのは楽しそう。みんなに見てもらい、一緒に楽しめたらいい」
 今後も意欲的に新講座を企画していく。「新しい講師の発掘も楽しみの1つ。ありとあらゆる絹の仕事を体験していきたい」
 「富岡を中心に絹のブームを起こして、富岡製糸場の世界遺産実現に貢献したい」。目を輝かせて話す表情はやる気に満ちあふれている。

(富岡支局 椛沢基史)