着付け 所作に日本人の魅力 草野二美子さん(61) 館林市本町 掲載日:2008/07/24
「和服を守るためには着る人を育てなければ」と話す草野さん
東洋大板倉キャンパスで6月下旬に行われた特別講座で講師を務め、留学生に振り袖や浴衣などを着付けた。
「絹が蚕の吐き出す糸から作られること、1枚の細長い布から着物ができていることなどを、繭玉や反物を使って説明した。養蚕を行っている国から来た生徒もいたのだろうけど、和服を目にしたことは無かったようで皆喜んでくれた」
館林市と千代田町の公民館など六カ所で着付けと作法の教室を開き、着物文化の普及に努める。「蚕を育てる人や着物を作る人を守るためにも、まず着る人を育てなければいけない」。夏に浴衣、冬には晴れ着の無料着付け講習会なども開き、精力的に活動を続ける。
着付け教室を始めたのは1992年4月のこと。前年の8月に乳がんの手術を受けたのがきっかけだった。「病院で悪性と言われた時、自分が生きてきたことの証しを残したいと思った。今やれることは何かと考えて、思い付いたのが着物だった。手術後間もなく、腕が持ち上がらない状態だったがリハビリのためにも、という知人の勧めもあって決意した」
育った環境からか、着物は小さなころから好きだった。実家は養蚕農家で、祖母の家には織機もあった。「ほぼ1年中、2階の蚕室から雨音のようなざわざわという音がしていた。手伝ったことはないが、母が毎日忙しく立ち働いていた姿や、祖母が機織りをしていた姿を覚えている」
嫁ぎ先の義母も1年中着物姿で過ごしていた。「今のように着物を着るようになったのは、この母の影響。着物を体の一部のように着こなす人だった。自分もこんなふうになりたいと思った。着物を着ることで所作が変わるのと同時に意識も変わる。日本人は着物を着てこそ、魅力が出る」
夏祭りの季節には多くの人が浴衣などを身に着ける。中には和服に似つかわしくないような着崩しも見られるが「どんな形でも和服に興味を持ってもらえればうれしい。本物の良さは次第に分かってくる」と寛容だ。
「次の仕事は、着物を着て出られる機会を増やすこと。旅行や食事会などさまざま考えていきたい」