絹人往来

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繭工芸 制作通じ絹の良さ知る 辺見 広子さん(67) 藤岡市矢場 掲載日:2008/03/28


「繭工芸で自然の草花の色を再現したい」と話す辺見さん
「繭工芸で自然の草花の色を再現したい」と話す辺見さん

 14年前、プレゼントされた人形の手にあった小さな花が、繭を材料にする繭工芸との出合いだった。
 「あの繭がこんなかれんな花になるなんて、と驚いて渋川市の作者のもとに通って夢中で習った」。技術を習得すると、草花をモチーフにした創作の傍ら、県内各地で指導もするようになった。
 出身は千葉県。藤岡市に嫁いで、まったく縁のなかった養蚕に従事することになった。
 約45年前の養蚕は家族総出の手作業。「街の子は蚕をつかめないだろうと、最初はシャクトリムシで慣らされた」。当時を振り返って笑う。
 「田植えも、桑園(そうえん)の手入れも何もかもが初めての経験。秋の桑つみでは、かごに入れすぎて立ち上がれなかったりした」
 当時は養蚕に対して、「ただただ忙しい」という気持ちしか抱けなかった。約30年前に家族の高齢化などで廃業。「しばらくしてから、すべてがすばらしい思い出になった」
 年月を経て繭工芸を手掛けるようになり、養蚕をしているころには意識しなかった「絹の良さ」に気付いた。
 「繭全体を一様に染色するのはとても難しい。でも、うまくいったときは、ほかの素材では出せない品のいい、柔らかい色が出る」
 「色あせしにくく、耐久性が高い」という長所も実感するようになった。これまで制作してきた作品は、数年前のものでも鮮やかな色を失っていない。
 着物への関心も高まってきた。
 「嫁いで来て間もなく、舅(しゅうと)が家でとれた生糸で作ってくれた」着物は、思い出といっしょに大切に保管している。そのほかの家に残る古い着物をリフォームして着ることも楽しみになった。
 今春、所属する更生保護女性会支部に「富岡製糸場の世界遺産登録運動が盛り上がっている機会だから」と提案し、地域の小学校卒業生に繭工芸のカーネーションをプレゼントした。材料の繭は近隣の農家に提供してもらった。
 「子供たちに絹のすばらしさと、地域の伝統を見直してもらえたら」と考えている。

(藤岡支局 渡辺龍介)