絹人往来

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着付け 娘の晴れ姿自らの手で 大小原けい子さん(54) 富岡市神農原 掲載日:2008/09/24


「娘の結婚式で衣装の着付けをしたい」と話す大小原さん
「娘の結婚式で衣装の着付けをしたい」と話す大小原さん

 1年を通して、着物を身に着けない日はほとんどない。絹の着物は100枚近く持っている。「小さいころから着物を着て生活するのが夢だったの」と少し照れながら顔をほころばせる。
 着物を着るようになったのは高校生のころ。正月に母が着せてくれるようになった。当時から日本文化に造けいが深く、日本舞踊の師範でもあった母は「いつでも凜(りん)と着物を着こなしていた」。自然と着物が好きになった。
 子育てが一段落した10数年前、夫の協力を得て高崎市の美容専門学校で着付けを習い始めた。「日舞の舞台に上がる母の着付けをしてあげたいと思った」。都内の専門学校へも定期的に通い、振り袖や十二単(ひとえ)といった、多彩な着物の着付けも覚えた。
 熱心に勉強するうちに、いつしか教える側になった。今では県外からも仕事を頼まれる。「結婚式や成人式、ディナーショー。いろんな場所で、いろんな人に着物を着せてきた。みんな喜んでくれるから、やりがいがある」と声を弾ませる。
 仕事で知り合った人が自宅に習いに来ることも多い。「着付けのおかげで、たくさんの人に出会えた。知り合いが増えると、世界が広がっていく。新鮮な気持ちで毎日を過ごせる」
 もちろん、教えるだけでは満足しない。これまで習ってきた中で一番気に入っているのは、数分の音楽に合わせて踊りながら着物を身に付ける「着付け舞」。機会があれば、自ら舞台に上がって披露する。「舞を見ている人に、着物を着ることの楽しさ、面白さを伝えたい」。地元の催し物のほか、年に数回は病院や福祉施設にボランティアに出向いて踊ってみせることもある。
 現在も花嫁衣装の着付けを覚えようと、都内の専門学校に通う日々が続く。「将来は娘の結婚式で、衣装の着付けをしてあげたい」と長女の晴れ姿を想像して笑顔をみせる。
 「日本人の体形には着物が一番合う。今はデザインもいろいろあるし、洋風にアレンジして楽しむことだってできる」と目を輝かせて魅力を語る。大好きな着物と一生付き合っていくつもりだ。

(富岡支局 椛沢 基史)