絹人往来

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小枠ランプ 県産材使い「光の道」 川鍋 正規さん(53) 前橋市西片貝町 掲載日:2008/07/19


「市民活動を通じて生糸のまち前橋をPRしていきたい」と話す川鍋さん
「市民活動を通じて生糸のまち
前橋をPRしていきたい」と話す
川鍋さん

 繭から糸を紡ぐ座繰り器に使われた糸巻きの「小枠」に光がともる。2005年から始まった「光の街まえばしプロジェクト」の指導的立場で市民活動をけん引。今年も全国都市緑化ぐんまフェア開催期間の春から初夏にかけて前橋駅前のけやき通りと広瀬川河畔に小枠ランプを飾り、光の道が県都の夜を彩った。
 「社会の構造転換と同様に、養蚕業にも曲がり角があって今に至った歴史がある。レンガ倉庫からシルクというテーマを検証していく過程で、小枠と出合った。市民によるまちづくりを考えていた時に、自分が何で前橋にいて前橋にこだわっているのかが、プロジェクトの入り口だった」
 小枠の材も、小枠を覆うランプシェードの絹も県産にこだわった。光をともすだけでなく、小枠の組み立てから座繰り体験、ランプシェードに花などの絵を描くワークショップを開催してきた。
 「養蚕をやっていた農家にいけば百個や200個の小枠がすぐ集まると聞いたが、訪ね歩いてもなかなか手に入らない。それで実際に糸を巻け、光がともせるようにできないか、プロジェクトの賛同者や仲間のアイデア、協力を得て県産の材料を使って小枠ランプセットとして再現した」
 中心市街地周辺の小学4年生が昨年、故郷前橋を知る一環としてランプシェードに絵を描く作業に参画するなど、活動の輪は広がりつつある。これまでプロの作家をはじめ、サッカーJ2ザスパ草津のメンバーらの作品も光の道に連なった。
 「生糸(いと)のまちの繁栄を支えた小枠をきっかけに、人と人が出会い、つながるプロジェクト。こうした市民活動は継続していくことに意味がある。今後はけやき通り、広瀬川と緑化フェアの会場となった前橋公園を結んだ光の回廊をつくれるような方向性を見いだしていきたい」
 小枠が織りなす幻想的な「光の絹道」づくりは県都の名物になった。市民活動を支える原点は「生糸のまちを知ってもらい、前橋のまちを明るく、元気に」という思い。「市内に製糸会社があり、中心街に活気があった、自分たちが見た時代の生糸のまちを伝えていく必要性も感じている」

(前橋支局 山形博志)