機巻き 骨折っても良い柄に 多賀谷房雄さん(78) 伊勢崎市下道寺町 掲載日:2007/10/30
「子供のころから触れ合ってきた糸に愛着を感じる」と話す多賀谷さん
伊勢崎絣(がすり)を制作する工程の1つ「機巻き」を長年続けてきた。78歳を迎えた今でも、仕事に精を出している。
機巻きは、糸に染色された柄を機織りができるように組み合わせて、“お巻き”や“箱巻き”という道具に巻いていく。
「柄の付いていない地糸と柄が染色されている絣を組み合わせて、縦の糸の柄を作る。図案通りに本数を合わせることが重要で、1本でも間違えばきれいに完成しない。ものによっては、半日以上かけて柄の構成を考えることもある」
糸は1本1本が細く、細かい柄もあるため、作業には繊細さが要求される。
「大切なのは、まとまっている糸をほぐすときに切らないことと、“あじ”(糸の順番)をこわさないこと。時代によって糸の種類や絣の柄も変化していて、絹やウールなど素材によって扱い方も違う」
伊勢崎絣は分業で作られている。
「さまざまな工程を勉強することが必要。業者間の連携も不可欠で、機巻きの前の段階で、糸に柄を染色する縛り業の人から相談を受けることもある」
父親の代から機巻きをしていて、物心ついたときには仕事ぶりをいつも見て、手伝いもしていた。
「家の座敷にはいつも糸があって、子供のころから触れていた。ずっと愛着を感じていた」
機巻きだけで生計を立てるのは難しく、農業と兼業で営んできた。
「機巻きは、農閑期の11月から翌年3月くらいまでが最盛期。機巻きや機織りなど、この地域の人たちはみんな伊勢崎絣に携わっていた。以前は機巻きしている家が10軒以上もあった」
絣の柄にも流行があり、時代によってニーズが違う。
「最近は柄が複雑で多様化しているから、困難な仕事も多い。どんなに骨を折っても良い柄にできあがれば、うれしいし、とてもやりがいを感じる」
1993年には、伝統工芸士にも認定された。歴史ある伊勢崎絣をいつまでも守りたいという気持ちは強い。
「細かい作業は大変なことも多いが、仕事をしているから元気でいられる。体が健康で、仕事があるうちはずっと機巻きを続けていきたい」