絹人往来

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呉服 日本の美引き出す絹 大沢 利博さん(37)  桐生市仲町 掲載日:2008/11/01


「地に足のついた商売で店を発展させ、孫の代まで継続させたい」と話す大沢さん
「地に足のついた商売で店を発展させ、孫の代まで継続させたい」と話す大沢さん

 桐生市本町の着物店を営む「大沢呉服店」の三代目社長。店頭での接客や店舗の管理など多忙な毎日を送っている。
 同店は絹製品に力を入れており、店頭に並ぶ商品の七―八割は絹。「絹は地元・桐生の伝統産業だし、日本人の心。日本人の美しさを引き出す力を持っていると思う。絹のつむぎなどは、お客さまから『夏涼しくて冬温かい』とのお言葉も頂くし、日本の気候風土に合っているのでは」
 先代社長、豊さん(73)の長男として生まれた。「幼いころからこの店で育ち、着物とともに過ごしてきた。跡を継ぐのは自然なことだった」。社会勉強も兼ねて地元の金融機関で8年ほど働いた後の2003年4月、入店した。
 以来、商品や接客、販売などについて勉強の毎日。顧客との会話の中から流行などをキャッチ、問屋や工房を見学し、要望に応えられるよう品をそろえている。着付けのサポートなどアフターサービスの充実にも心を砕く。「お宅で買って良かった」と声を掛けられるのが喜びだ。
 着物や絹の底力も発見した。「実際に呉服店の仕事をするまで、着物は成人式に代表されるように、華やかであでやかなイメージがあった。しかし着物には産着から喪服まであり、幅広い年代から支持を得ている。日本の文化に深く根付いていると気付いた」
 さらに、「1度仕立てた着物もほぐして反物に戻し、別の着物に仕立て直せる。エコロジーな部分もある」と続ける。
 時には、サラリーマン時代とのギャップも感じる。
 「いつ店に来てもらっても万全に対応できるようにするため、仕立ての状況や伝票など常に店の情報を把握している必要がある。電話にも、何かあれば時間に関係なく対応しないといけない」
 桐生では和装から洋反物へと転換する業者が増えた。和装業界には全体的な先細り感も漂っている。
 「でも和装の文化がなくなるとは思えないし、品を確保できなくなることはない」
 十月中旬に結婚したばかり。「地に足のついた商売で店を発展させ、孫の代まで継続させたい」

(桐生支局 奥木秀幸)