絹人往来

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板締め絣 職人芸で精巧な染め 武正 正さん(79) 伊勢崎市東本町 掲載日:2007/06/07


「技術を守り、伊勢崎絣を大切にしてほしい」と語る武正さん
「技術を守り、伊勢崎絣を大切にしてほしい」と語る武正さん

 板締め絣(かすり)の糸を染色する染色業を営み、1998年に廃業するまで、40年以上手掛けた。地元伊勢崎市をはじめ、茨城や山梨など県外の業者からも多くの仕事を任された。79年に伝統工芸士に認定されるなど、その技術は高く評価されている。
 両親が無地染めをしていたため、幼いころから仕事を手伝っていた。次第に板締め絣の需要が増え、57年には独立して板締め絣の製作を始めた。
 「先輩の職人はやり方を全く教えてくれなかった。自分の目で作業を見て研究した。無地染めをやっていたこともあり、1、2年で形にはなった」
 板締め絣は、凹凸のある板に糸を巻き付けて染色し、精巧な模様を表現できる。細かい柄を糸に付けていくため、一瞬たりとも気が抜けない作業だ。
 「染める時間や温度、板の締め具合、染料の使い方などすべてがうまくいかないと納得いくものはできない。季節やその日の天候によっても仕上がり方が変わるため、微妙な調節が難しい。経験を積んだベテランの職人でも失敗することがあるほど。満足いくものができたときは本当にうれしい」
 機屋の注文を受け、要望に沿ったものを作らなければならないことも苦労の一つだった。
 「機屋さんが持ってくる柄を分解して図に起こして染色する。染める糸は機屋さんが持ってくるため失敗は許されない。要望通りのものを作るのが当たり前だった」
 最盛期はほぼ毎日、朝から夜遅くまで働き続けた。月に2日間しか休みがなく、休みでも県外へ集金に出掛けなければならないほど多忙だった。
 昨今、着物を着る人が少なくなり、伊勢崎絣の技術が表に出る機会が減ってしまったことが残念だという。
 「これだけの産地で素晴らしい技術があるのに、埋もれてしまってはもったいない。貴重な技術を大切にしてほしい」

(伊勢崎支局 伊草実奈)