絹人往来

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着物 消費拡大へPRに腐心 大川原 有重さん(50) 高崎市 掲載日:2008/07/15


「着物は着心地が良く、1度着ると夢中になる」と話す大川原さん
「着物は着心地が良く、1度着ると夢中になる」と話す大川原さん

 「着物は情緒、帯は理性、二つが合わさることで知性が表現される。だから着物は美しい」
 美術関係の仕事に携わり、美への関心は高い。10年以上前に、「からむし織」で知られる福島県昭和村を訪れたことがきっかけで着物に魅せられた。今では50着ほど所有している。
 「3代着られるし、サイズも好きに調整できる。着心地が良く、1度着ると夢中になる」。能や歌舞伎を見に行く時はもちろん、普段、家で着て過ごすことも多い。
 「着物は高いと言われるが決してそんなことない。お蔵入りしているものに手を加えたり、リサイクルショップで買う方法もある。高いと思い込まないでほしい」。着物の魅力を知る人を増やしたいという思いが口をつく。
 福島県出身。家は農家で蚕も飼っていた。「小学生のころは学校から帰ると、桑の葉を取ってきて“蚕様”にあげていた」と振り返る。
 4年前に古民家を買い取り本県に住み始めたが、「群馬に来て、絹織物がとても盛んだったことを知り驚いた」という。
 今年4月、高崎市で開かれた男性の着付け教室に参加した。着付けの練習をするモデルになったり、自ら帯の多彩な締め方を習った。「普段自分が使う締め方は3種類くらいだが、教室では10種類ほど練習した。背中側の締めの形がおしゃれな結びも習えて良かった」と成果を語る。
 今年から、県立農林大学校の社会人コースで農業を学び始めた。「農薬を使う農家が増えたのは、養蚕農家が減って桑畑がなくなり、桑の葉に農薬がかかる心配がなくなったから。蚕糸産業の衰退はこんなところにも影響が出ている」と指摘する。
 「絹産業の復興のためには、着物の消費拡大が重要。若い人にもっと着物を試してほしい。福田総理が着物を着て、日本が世界に誇るファッションと、群馬の絹をアピールしてくれれば」と振興策を提案する。
 「夏の間は麻の着物に限る。通気性があって気持ちいい」。これからも暑さの厳しい日が続く。着物を着る日がさらに増えそうだ。

(高崎支社 今泉勇人)