「栃窪風穴」測量 7人で協力資料収集 浦野 優貴君(18) 東吾妻町三島 掲載日:2007/10/05
測量班のメンバーとともに、データ整理を続ける
浦野君(前列左から2人目)=中之条高校
「栃窪風穴を測量して基礎データをまとめてほしいと、私たち(中之条高校農業土木科測量班)に依頼があった時はうれしかった。そんな大事な役目を高校生にさせてくれるとは思ってもみなかった」
今年6月に世界遺産の暫定リスト入りした「富岡製糸場と絹産業遺産群」の1つとしてリストアップされている中之条町の栃窪風穴。蚕種貯蔵施設として貴重な遺構だが、しっかりとした記録は残っていない。
「中之条町教委と県から頼まれ、3年の測量班7人がデータ収集に当たることになった。7人で光栄に思うとともに、間違いの無い確かな図面を仕上げようと誓い合った」
現地での実測は、夏休みを返上して行った。長期間、放置されていた風穴は山間の自然の中に埋もれていた。メンバーを引っ張り、測量に汗を流した。
「これまで学んだ測量実習は、ほとんど平らな道路や広場だった。今回は足場が悪く、距離と角度を同時に測れる電子式測量機・トータルステーションを水平に設置するだけでも大変な作業だった」
全体の大きさ、石垣の位置や角度など遺構の地形図を作るのが主な役目。縦横の断面図を八面製作する予定だが、その基礎資料として、七百カ所近い測量が必要だった。
「測量機は電波を発信し、観測点から反射してくる電波で距離などを測る仕組みだが、予想外の枝や葉が茂っており、見通しが取れず計測不能の連続だった」
風穴の冷気を利用した蚕種貯蔵庫は石積に囲まれ、東西4メートル、南北8メートルほどに広がっていた。北東部分に冷気の吹き出す1・5メートル4方ほどの穴があった。
「穴は崩れがひどく、崩れた石のすき間から吹き出してくる状態だった。温度はほぼ零度で、真夏だというのに近くを測量していても寒くて長い間いられなかった」
町は、測量班のデータをもとに、施設を復元、整備をする予定だ。
「現在、パソコンでデータを分析し、整理しており、年内にも地形図を仕上げて報告したい。こうした機会を得られ、世界遺産登録運動の一端を担えたことは、将来、測量の世界で生きていく上で貴重な体験させてもらったと感謝している」