絹人往来

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シルク布団 独自技術で視線世界へ 富沢 順さん(69) 高崎市剣崎町 掲載日:2007/11/15


絹の袋真綿を手に、シルク布団の品質について語る富沢さん
絹の袋真綿を手に、シルク布団の品質について語る富沢さん

 寝具の開発、製造、卸販売を手掛ける丸三綿業の社長。高級繭「ぐんま200」などを使ったオールシルクの布団や毛布を、独自の技術で作っている。
 「旧官営富岡製糸場を中心とした世界遺産登録運動にならって、群馬のシルクを国内だけでなく、世界に発信したい。県産の生糸でないと、本当にいいシルク布団はできない。安いからといって、外国の輸入生糸を使うわけにはいかない」
 同社の布団とその製造方法は、県の「1社1技術」に選ばれている。県や群馬大と連携した産学官共同の技術開発にも貢献。「生糸毛布」「本まゆわたかけふとん」などのオリジナル製品を、都内の大手百貨店や寝具専門店に直販で卸す。
 「生糸の寝具は肌に優しく、蒸れない。ただ、お年寄りの手作業で袋真綿を作っているので生産量が限られ、シルク布団の価格は40万円台になる。今、バイオ加工をした新製品の開発を進めている。洗濯でき、空気をもっと含んだボリューム感のあるものを、現在の半分以下の価格に抑えて作りたい。年内に試作品ができ、来春には市場に出る予定だ」
 皇太子家の長女、愛子さまご誕生の際、最高級綿使用の子供用敷きマットを宮内庁に納入して話題となった。カシミヤ、キャメル、テンセル、綿花などを使った寝具全般を製造する中、シルクには強いこだわりがある。
 「10年ほど前、横浜国大に全国から12社が集まり、睡眠について研究したことがある。その時に自分の原点を見つめ直したら、群馬はシルクじゃないかと、あらためて気づいた。よりよい睡眠には体に優しい、天然のいい素材が必要だ。布団によく使われるくず糸ではなく、高級のシルクでオンリーワンの商品を作っていきたい」
 明治大工学部機械科卒。大学の研究を請け負う「足利工大睡眠科学センター高崎研究所」を社内に設置し、寝具の保温性や吸湿性をコンピューターで分析している。
 「大量生産の時代ではない。日本には資源はなくても、優れたシルクがある。機能性を技術開発していくことが日本企業の生命線。日本の布団はまだ輸出されていないが、ヨーロッパの市場を視野に、本物が分かる人に提供できたらと思っている」

(高崎支社 関口雅弘)