絹人往来

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まゆ華 温泉彩る養蚕県の心 飯野 晶子さん(57) 渋川市伊香保町伊香保 掲載日:2007/12/20


「まゆ華を見て、伊香保を群馬の温泉だと感じてほしい」と話す飯野さん
「まゆ華を見て、伊香保を群馬の温泉だと感じてほしい」と話す
飯野さん

 「まゆ華(ばな)」は、県産繭を7色に染め、竹ひごにあでやかな花が咲いているように取り付ける飾り。部長を務める伊香保温泉の女将(おかみ)らでつくる同温泉旅館協同組合婦人部「お香女(かめ)会」が5年前に考え出し、約30軒の旅館がそれぞれ工夫を凝らして制作。「養蚕県・群馬の伊香保温泉」を全国から訪れる観光客にアピールしている。
 「県産繭を使って、伊香保温泉に統一性を持たせ、群馬と伊香保温泉を1体的に売り出すものを作ろうと、女将らが知恵を出し合った」
 白い繭を伊香保地区の染色のグループ「吾亦紅(われもこう)」の協力を得て7色に染めてもらい、1メートルを超える長い竹ひごに取り付けて仕上げる。多くの旅館が玄関や自慢の温泉の入り口などに飾っている。
 7色も女将らが「伊香保温泉にちなんだ色」をキーワードに選んだ。黄色と白は「黄金(こがね)の湯」と「白銀(しろがね)の湯」、ピンクとオレンジは旧伊香保町の花「ツツジ」、紫は徳冨蘆花から「ホトトギス」の花の色、緑と青は自然豊かな伊香保の新緑と空の色を表している。
 飯野さんの旅館では、5階の受け付けから4階に通じる階段の踊り場と、風呂の入り口の2カ所に従業員らと協力して作り、設置している。
 館内にはユニークな信楽焼のタヌキの置物10体が置かれており、酒どっくりを持った「のんべえ狸(たぬき)」と「子宝狸」を覆うように、まゆ華が取り付けられている。
 また、梅雨の時期に青く染めた繭を雨が降っているように糸でつるし、その下にカエルの置物を据えるなど、見せ方を工夫する旅館もあるという。
 「まゆ華について、お客さんから『これは何ですか』と聞かれることも多く、群馬は養蚕が盛んなので女将が考え出した縁起の良い飾りと、説明している」
 まゆ華は各旅館を彩るだけでなく、3月の石段ひなまつりと7月の「たびの日いかほ」のイベントでは温泉客らにプレゼントしている。
 「群馬らしい、この飾りを通じて、伊香保温泉のもてなしの心を温泉客に伝えていきたい」

(渋川支局 斉藤雅則)