和裁 絹の柔らかさが好き 小暮 美沙さん(23) 太田市東長岡町 掲載日:2008/03/13
技能五輪全国大会の和裁部門で優勝した小暮さん
千葉ポートアリーナで今月1日から3日まで開かれた第45回技能五輪全国大会の和裁部門で優勝した。丁寧な仕事が高く評価された。
課題は1反の正絹の着尺地を2、3日の九時間で1着の袷(あわせ)の着物に仕上げることだった。
「裾(すそ)の角にあたる褄(つま)は特に気を付けた。左右を対称にして、裾のラインが真っすぐになるよう仕上げた」
自信があったわけじゃない。「準優勝した昨年よりも、良い成績をとりたいという気持ちが今年を支えてくれた」と振り返り、「プレッシャーをかけずに、先生たちが優勝できるように指導してくれたおかげ」と周囲に感謝する。
桐生市仲町の群馬和裁専門学院の門をたたいたのは5年前。高校卒業時に「手に職をつけたいと思った。『和裁』という言葉も知らなかったが、母からも勧められた」。当時の友達も驚く決断だった。
岡田成雄校長(65)は「指導されたことを一つ一つ自分のものにしていった。いつも基本を繰り返していた」と、5年間の努力を語る。
大会の直前には、入学当時、毎日繰り返した真っすぐに縫うための「運針(うんしん)」を再び繰り返した。23歳の出場制限がある中で、24歳の誕生日直前に大きな“勲章”を得た。
「表彰式でも実感がわかなかったのに、金メダルを手にして喜びが込み上げてきた」と笑顔を見せる。4月には、自宅で独立する。
入学当時の基礎練習では、綿の生地で浴衣を縫った。初めて絹を扱ったのは着物の下に身に着ける長襦袢(じゅばん)だった。
「正絹に触った記憶もなかったので、あの時の柔らかい感触は忘れられない。最初は縫いづらかったのに、今は絹地がとても好き」
プロの裁縫士を目指した学びやからの卒業を間近に控え、難しい正絹のちりめんの生地を扱っている。「だんだん完成していくのは面白い。針仕事は高校の家庭科ぐらいだったのに飽きずに一生懸命できたのは自分に合っているのでしょう」
独立後は「1枚でも多く仕立てたい。私を信じて仕事をさせてくれる人が現れたら、とてもうれしい」と胸を弾ませる。
「いつか母に自分の縫った着物を着せたい」。和裁の道を推薦した母への感謝も忘れていない。