桑摘み唄 地域の歴史、歌い継ぐ 森村 清志さん(53) 伊勢崎市境上武士 掲載日:2007/10/13
自分で生産した繭を使ってコサージュなどを作る青木さん
伊勢崎市境地区に残る民謡を伝える「剛志民謡保存会」の会長。明治期に生まれたとされる「桑摘み唄(うた)」などの継承と後継者育成を目指し、練習を重ねている。
桑摘み唄は養蚕が盛んだった剛志、島村地区で歌われた仕事唄。ゆったりとした2拍子のリズムに地名や作業風景が織り込まれている。
盆踊り唄「赤わん節」とともに1960年、「剛志の民謡」として旧境町の指定無形文化財になり、合併した新市から2006年、「重要無形民俗文化財」に指定された。保存会で踊りと囃子(はやし)をつけ、現在の形になった。
「『嫁をとるなら武士(たけし)の娘 色も白いし器量よし』『蚕上手な嫁御をもらえ 細いしんしょうも太り縞(じま)』の歌詞が気に入っている。養蚕や織物は女の人に支えられてきたという、かかあ天下の地域性が感じられる」
養蚕農家に生まれたが、05年に保存会に入るまで、桑摘み唄のことはほとんど知らなかった。
「昔は辺り1面桑畑で、田植えと上蔟(ぞく)の時は忙しくて学校も休みになるほどだった。家の中にも蚕のかごが並び、寝るところもないぐらい。そのころも桑摘み唄が歌われていたのかもしれないが、自分は保存会で初めて知った」
保存会は、月1回、会員21人が境剛志公民館で練習。最近は発表会や福祉施設訪問、学校での上演など活動は広がりを見せつつある。
「自分たちだけで楽しむのでなく、地域の人にも恩返ししようと始めた。施設ではお年寄りが一緒に歌ったり踊ったりしてくれる。みんな覚えているんだなあとうれしくなる」
保存会は50年以上の歴史を持つ。会員は80代から20代までで、「親子3代」にわたるが、高齢者が多く、歴史を伝えていく思いをこれまで以上に強く持っている。
「昔の人たちが培ってきたものを教わり、バトンタッチするのがわれわれの役目。次の世代へつなげていくためにも、もっと若い人に入ってもらえるよう呼び掛けていきたい」