金襴織物 需要増へ若者向け考案 周東 通人さん(50) 桐生市広沢町 掲載日:2007/05/01
きらびやかな金襴織物を前に、「若い人にも良さを広めたい」と語る周東さん
金銀糸が織り込まれたきらびやかな「金襴(きんらん)織物」を扱う周敏織物の2代目。祖父の代から紋切り屋を始め、終戦後の織物全盛期に合わせて父が機屋を立ち上げた。
「ラメが織り込まれた金襴織物は、ひな飾り、五月人形などの服飾に用いられてきた。華やかな布地は、祝い事の催しによく似合うからね」
26歳で入社。景気が良い時期で、高価なラメを織り込んだ高級品が主力商品だった。父の引退を機に、43歳で社長に就任。かつて8割を占めた人形用の金襴織物は、6割に落ち込んでいた。和室が減るなど生活様式の変化で、ひな人形の段飾りや贈答用の人形が少なくなったからだ。
「消費者の感性が変わっても、和文化から離れるわけにはいかない。手ごろな値段で買える製品を増やすことで、需要を掘り起こしている。父が残してくれた伝統を生かしながら、市場性を研究している」
色やデザインを若い人向けに考案。うさぎや花柄など「今風のかわいさ」を生地に取り入れた。和柄ブームの影響で、金襴織物は幅広い分野に生かされている。インテリア雑貨、壁紙、和装小物のほか、靴の素材にも使われ、落ち着きがある風合いで人気を呼んでいる。
「扱う模様は1万種以上で、年間200の新作をデザインする。でも、根っこにあるのは、受け継いできた伝統文化。古来の柄や様式、技術がベースで、その上に新しい発想が生まれる」
絹糸で織り上げた茶具、絵巻物のように華やかな織物など、伝統を受け継ぐ技術は高く評価され、NHKの大河ドラマでも衣装に使われている。
「金襴織物は多色で柄のバリエーションが多い。繊細で立体的な美しさは、プリントに負けない。日本人だから、和柄に抵抗はないはず。金襴織物の良さをもっと若い人に広めたい」
今後はホームページを立ち上げて、ネットを通したPRも考えている。
「今は織物が専門店化し過ぎて、若い人との間に距離がある。もっとリーズナブルで、どこでも買えるようになれば良い。それが伝統を守ることにつながると信じている」