絹人往来

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ケズリバナ 豊作願う風習守りたい 河合洪太郎さん(82) みなかみ町東峰 掲載日:2008/01/12


中之条町のボク市で手作りのケズリバナを販売する河合さん
中之条町のボク市で手作りのケズリバナを販売する河合さん

 中之条町の新春の風物詩として親しまれている「ボク市」で店を出している。小正月を控えて開かれる「ボク市」は養蚕の豊作を祈る繭玉飾りのためのケズリバナやミズキなどを商う伝統の市。最盛期は30店もの露店が並んだが、現在ケズリバナを扱うのは1軒だ。
 「関東地域のボク市は数年前までは各地で開かれていたが、この名称が今も残っているのはここ(中之条)だけと聞いている。年寄りの小遣い稼ぎといったところだが、体の続く限りは伝統を守っていきたい」
 江戸時代の風俗を記録した本に、「削掛(けずりかけ)売り」と呼ばれるヤナギの枝を削った縁起物を年末に売り歩いた大道商いの姿が残っている。
 「庶民は、その削掛を買い求め、軒先につるして“魔よけ”にした。北毛地区で、今も繭玉飾りのひとつとして欠かせないケズリバナはこの風習が繭の豊作を願う養蚕農家の願いと結びついて残ったのではないか」
 小正月の前になると父親が自宅の近くの山に生えているヌルデを切り取り、乾燥させてケズリバナを作るのを見ながら育ち、20歳ころからは自分も見よう見まねで作り始めた。
 「最近は、山に入ってもケズリバナに適する木が少なくなり、畑でヌルデの木を育てている。年末に切り、2、3日乾燥させてから皮をむき、ハナカキなたと呼ばれる専用のなたで表面を薄く、細く削りキクの花が開いたように仕上げる」
 毎年300個前後のケズリバナを作り、ボク市の店頭に並べる。
 「農村部では小正月前になると、家長がケズリバナを作る風習もあり、その家その家のハナがあった。今はそのうちのキクバナ、ナゲバナなど代表的な3種類を手掛けている」
 乾燥具合や節の少ないハナに適した木を見つけるのが難しく、削って薄くなった花びらになる部分が切れないようにしながらきれいにカールさせて花に見せる技がポイントだ。
 「素朴なふるさとの風習を絶やしたくない。声をかけてから自宅に来てくれれば、だれにでも技を教えるよ」

(中之条支局 湯浅博)