絹人往来

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着物リフォーム 持ち味生かし普段着に 二宮 洋子さん(56) 玉村町角渕 掲載日:2008/08/21


「いろいろな人の手を経てきた着物にはぬくもりがある」と話す二宮さん
「いろいろな人の手を経てきた着物にはぬくもりがある」と話す二宮さん

 自宅で洋服の仕立てや直しなどの仕事をしている。5、6年前からは、着物を洋服にするリフォームも手掛ける。
 生地が持つ味や柄を生かし、流行も取り入れながらベストやブラウス、スーツ、コートなどさまざまな物を作っている。
 「今は特別なときにしか着物を着ない。洋服にしておけばいつでも着られる」
 実家は兼業農家。母親が養蚕をしていたため、桑取りなどをよく手伝った。
 「昔は『お蚕さま』というくらい貴重なものだった。学生の時も、蚕の世話で勉強どころじゃなかった」と振り返る。
 もともと洋裁が好きだった。「手に職を付けたい」とも考えていたため、短大で被服を学んだ。夫の転勤で神戸市に住んでいたときに、既製服の作り方も働きながら勉強した。
 着物のリフォームに携わるようになったきっかけは、お客さんから「着物の生地で何かできないか」と依頼されたこと。1度も着ていない着物の布にはさみを入れていいものか、ためらう気持ちもあったが、思い切って挑戦した。
 「眠っていた着物の生地が洋服に生まれ変わって、お客さんも喜んでくれた。とてもうれしかった」
 古い着物を扱うたびに、先人たちの持ち物に対する考え方に感動するという。「昔の人は布地が擦り切れ、裂けるまで着ていた。こんなにも大事にしていたんだと思うと頭が下がる」
 古い物には、最近の物にない良さがあると感じている。「どうしたら布の持ち味を最大限に生かせるかを考える作業が面白い。二、三週間ずっと考えていることもあるけど、知恵を出せば出しただけ、いい物ができる」
 何年もしまったままになっている着物を使うにはとても手間がかかる。
 「ほぐして、洗って、アイロンをかけてと大変。でも、着物1枚1枚に持ち主の思い出が詰まっていて、価値がある。それをしまったままにしておくのはもったいない」
 これからも着物のリフォームを続けたいと思っている。「普段着として、心置きなく着られる物を作っていきたい」

(伊勢崎支局 伊草実奈)