クラフトキット 繭の文化伝えたい 今井 信子さん(76) 伊勢崎市除ケ町 掲載日:2007/12/18
「繭でいろいろな形ができる」と作品の動物や花を示す今井さん
富岡市の旧官営富岡製糸場売店に、土産物として並ぶ繭クラフトのキット。繭や小さな部品、製作手順の説明書を詰めた袋は手ごろな値段で繭の持つ良さを伝える。作品を考え、キットを作る甘楽富岡蚕桑(さんそう)研究会の女性7人の最年長メンバー。
キットの素材は園児の創作活動指導やイベントの体験コーナー出展の際にも活用する。主体は動物。えとのネズミ、トラをはじめ、子供に人気のパンダ、アザラシ、金魚、交通安全祈願の「無事カエル」など多彩な作品をメンバーで考えてきた。
「繭の文化を消したくない。みんなでアイデアを出し合う。考えていると、楽しく、忙しい」
「園児でも手先の器用な子は上手に作るが、子供によって形はそれぞれ。耳の位置の離れた作品ができたりするけれど、みんな真剣に作る」
JA甘楽富岡の農業研修センターに毎月集まり、流れ作業でキット詰めをする。繭は碓氷製糸農協(安中市)から取り寄せる本県のオリジナル蚕品種、ぐんま200。動物などの体に合わせた染色作業もメンバーの1人が担当する。観光宣伝用に大量注文を受けた時もあり「3000個作った時は、1日では間に合わないかと思った」と笑う。
夫の豊治さん(78)とともに、1996年まで養蚕を続けた。収繭量を減らしたころ、養蚕指導の県職員からクラフトの勧めを受けた。
「前橋あたりにもよく連れて行ってもらった。コサージュ作りを習い、ろうけつ染めやコースター作りも勉強させてもらった」
動物以前に、花のキットや完成品を専門に作った時期がある。現在も保育園指導の際は母親にコサージュを作ってもらう。メンバーが中高年主体だけに「若い人にも仲間に入ってもらうため、普段から動物と花、両方できればいいのかも」と考える。
きょうだい12人の市内の養蚕農家で育ち、結婚後も春蚕(はるご)から初冬蚕まで年5回の飼育を手掛けた。兄たちの出征で厳しかった農作業、嫁ぎ先近くにできた市内最初の共同飼育所、苦労した桑集め―。思い出は尽きない。だからこそ「シルクをもっとアピールしてもいい」と思っている。