絹人往来

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新風 夢かなえ染織の道に 潮 優子さん(22) 邑楽町中野 掲載日:2007/4/4


「自分の手で着物を織りたい」と夢を語る潮さん
「自分の手で着物を織りたい」と夢を語る潮さん

 「絹や織物がはぐくまれた群馬で生まれ、自然と染織の道を選んだ。早く技術を上達させて、自分の手で着物を織りたい」
 今年3月、桐生市東の老舗織物会社「泉織物」(泉太郎社長)に入社。子供のころから夢見ていた染織職人へ、第一歩を踏み出した。
 昔から、ものをつくることや和風の柄が好きだった。「とにかく織物をやりたい」との思いから、文化女子大造形学部に進学、染織を専攻して織りや染めの基礎を学んだ。
 卒業後の進路として、染織職人を目指すが、経営環境の厳しい織物業界で、新卒を採用する社は少ない。友人が次々と企業への就職を決めていく中で焦りも生まれ、一般企業の合同説明会にも足を運んだ。しかし、織物への強い思いは変わらなかった。
 大学3年の秋、関係者から紹介されて泉織物を訪問した。「大卒の人を雇うほどの余裕はない」と一度は断られたが、再度訪問し、内定を得た。約1カ月の研修を経て、3月22日付で入社した。
 泉社長(43)は「着物が好きといういちずさに打たれた。社員の高齢化が進む中、若い潮さんが入社した効果は大きい。『泉に潮あり』と言われるように頑張ってほしい」と成長を温かく見守る。
 自宅の邑楽町から桐生の工場に通う、新しい社会人生活が始まった。現在は糸の扱いに慣れるため、経糸が千本の紋織物を織る仕事を担当している。
 「大学で習ったことと現場の技術は全く違う。まず機械の使い方から覚えなければならない。早く技術を習得し、先輩たちのように複数の織機を扱えるようになりたい。自分で織っているものが商品になると思うと責任を感じる」
 まだ、スタートを切ったばかりだが、織機の前に立った表情には、職人としての緊張感も漂う。
 「幾本もの糸から、形ある織物が作り上げられる。そのこと自体が織物の魅力。これは日本がなくしてはいけない、残していくべき伝統だと思う」

(桐生支局 高野早紀)