絹人往来

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着物リメーク 愛着…日傘やバッグに 兵藤 孝子さん(54) 桐生市広沢町 掲載日:2007/11/30


浴衣をリメークして作った日傘を手にする兵藤さん
浴衣をリメークして作った日傘を手にする兵藤さん

 「1枚の着物をつくる大変さを分かっているから、着ないからといって処分してほしくない。さまざまなリメーク方法があることを知ってほしい」
 旧赤堀町(現伊勢崎市曲沢町)出身。実家は養蚕農家で、冬になると母は銘仙を織る内職をしていた。蚕から繭になり、糸にして織るという手間のかかる作業を見て育っただけに、織物への思いは深い。
 「友人から、親が亡くなると着ていた着物も捨ててしまうと聞いてショックを受けた。母は『ものがない時代だったから、着物を見ればそのころが目に浮かぶ』と着物を大事にしていた。処分したら、その人の人生もなくなるようで寂しい」
 洋裁学校で学んだ技術を生かして、5年前から洋服の寸法直しなどを請け負う工房を構えている。当初はエプロンを中心に扱っていたが、着物をリメークしたバッグや洋服なども手掛けるようになった。そんな時、着なくなった着物を日傘に仕立てる傘職人、鎌田智子さん(東京都)を知った。
 「こんな方法があったのか、と衝撃を受けた。生地によって張りが違う日傘は難しく、何度も店に通って技術を教えてもらった。最後は『これで大丈夫、頑張りなさい』と励まされた」
 自分も形見の訪問着を日傘にリメーク。夫から結婚前に贈られ、実母が仕立ててくれた思い出の着物も、上下を分けた「2部式着物」に直して愛用している。
 「新しく買うより、愛着がある布の方が落ち着く。なにより思い出の着物を日常の中に生かすことができて幸せ。余裕がない時代だからこそ、日用品にも情緒が必要」
 両親の介護の経験から、体の不自由なお年寄りに簡単に着られる「2部式着物」のリメークを勧めたことも。自分の好きだった柄を着ることで気分が良くなる、と口コミで評判も広がってきた。
 「桐生の人は絹を高く評価しているけれど、実際に着ている人は少ない。着物を生活の1部として残すため、活用方法を地道に広めていきたい」

(桐生支局 高野早紀)