芸術作品 幼少期の記憶が原点 豊田 共子さん(62) 前橋市昭和町 掲載日:2008/01/30
絹糸を使って宇宙をイメージした
立体作品を前にする豊田さん
昨年10月に伊勢崎市内で、「織物のある暮らし―光と風を紡いで」と題した初めての個展を開いた。絹糸や麻、ウールを機織りでタペストリーなどに仕上げた「芸術作品」が30数点並んだ。
「絹糸を使って宇宙をイメージした直径2メートルほどの立体作品を展示した。絹糸はやはり光沢が違った。開く前は不安だったけれど、自分なりにうまく作品をまとめることができた」
母方の実家が足利市内で機屋だった。のこぎり屋根の建物から聞こえた「カシャ、カシャ」という機械音が記憶に残る。幼少の思い出が現在の活動につながっている。
「建物の中は、にぎやかで活気があったことを覚えている。作っていた製品の真っ赤な色がとてもきれいだった。この時の記憶が原体験になっている。自覚はしていないけれど、いまの活動は小さい時の記憶とつながっていると思う」
織物と出合ったのは30年ほど前。ある人の個展を見て興味を覚え、自宅で個人授業を受けながら、機織りの技術を基礎から学んだ。現在では染めから織りまでの工程をこなせる腕前に成長した。
「織る時には初めに経(たて)糸を入れ、そこに緯(よこ)糸を1本入れた瞬間に面ができる。入れる糸によって刻々と色が変わり、時には予期せぬ色になることもある。楽しさであり難しさでもあるが、いつもワクワクする」
8年ほど前から公募展への出品を始めた。趣味の枠から1歩踏み出し、新たな挑戦となった。
「人の目にさらされることは自分の勉強になる。趣味だったら作品づくりに妥協してしまうが、人に見てもらうには自分に厳しくないといけない。少しでも前進しないとだめ」
2001年に開かれた県美術展覧会では、波が来るような感じを表現したタペストリー「WAVE」を出品。工芸部門で一般公募作品の最高賞となる知事賞を獲得した。
「一生懸命やったことが評価され、すごくうれしかった。糸がたわむことで、互いに重なったり、光の揺らめきが出るように表現できたのがよかった」
今後も個展を開きながら作品を発表し、織物と向き合っていくつもりだ。