裂き織 癒やしの時間楽しむ 斎藤 満利さん(60) 富岡市下黒岩 掲載日:2008/05/23
機織り機の前で「裂き織は癒やし」と話す斎藤さん
はさみで切って幅1センチ弱の帯状にした絹の着物を緯(よこ)糸にして、経(たて)糸に張った木綿糸や絹糸とともに機織り機で織り込んで生地を作る。服を裂いて織るので「裂き織」と呼ぶ。
出合いは友人と見た雑誌。「良い感じの裂き織の上着を見つけたんだけど、どこに売ってるか分からなかった。買えないなら自分で作っちゃおうと思った」
次女が高校を卒業した10数年前、それまで続いた娘たちの送り迎えがなくなった。サラリーマンだった夫は当時東京で単身赴任中。久しぶりに自分の時間ができた。
趣味の裁縫にのめり込む中で裂き織に興味がわき、機織り機を購入。やがて絹を使って本格的に始めた。
「絹は手触りが良くて色もきれい。裂き織した生地を仕立てると、軽くて光沢のある服ができる」
2年前に自宅の庭に建てた作業小屋では一日中裂き織をする日も。「仕事じゃないから苦じゃないのよね。散らかるし大変だけど、出来上がると達成感がある」。小屋にこもって深夜まで熱中し、家族に母屋の鍵を閉められたこともある。
今まで作った裂き織のベストやジャケットは30着を超える。人から頼まれて作ったものも多い。
「友達だけじゃなく、友達の友達からもお願いされる。全く知らない人から声を掛けられて、作ったこともあった」
旅先で思い出深いエピソードがある。数年前に長野・善光寺へ夫と出掛けた時のことだ。
「境内を歩いてたら後ろからついてくる人がいたの。不思議に思っていたら、突然『それが欲しいんですけど、どこで買ったんですか』って」
女性が指さしたのは夫が着ていた裂き織のジャケットだった。
「驚いたけどうれしかった。一目見て気に入ってくれたんだもの」と目を細める。近くの物産店に勤めていたその女性には後日、再び同寺を訪れて新たに作ったジャケットを手渡した。
一着作るのに2―3週間と、それなりの手間がかかる。それでも全くやめる気にはならない。
「裂き織は私にとって癒やしだからね。遊びながら、自分流で絹を楽しんでいきたい」