絹人往来

絹人往来

機屋 独自色ある和装提案 後藤充宏さん(41) 桐生市東 掲載日:2008/07/05


「先人から受け継いだ織物を後世に伝えたい」と帯を持つ後藤さん
「先人から受け継いだ織物を後世に伝えたい」と帯を持つ後藤さん

 米国映画「SAYURI」が2005年、日本で公開された。舞台は日本の架空の花街。銀幕で芸者役の女優、チャン・ツィイーの着物姿が光った。身に着けた帯は138年続く桐生の機屋「後藤」の丸帯だった。
 「自分たちで作った帯を付けていただいた。その姿を見ることができ、うれしかった。映画も現実も変わらない。たくさんの人に和装の良さを伝え、着てもらいたい」
 同社の5代目。東京の大学を出て、そのまま着物問屋に勤務。サラリーマン生活を送った。
 「帯のことは漠然と知っていたが、一般の方と同じ程度の感覚。小売業者を回らせてもらい、和装の流通や帯の種類を知った。想像以上だった」
 3年後の1994年、桐生に戻った。
 「最初は工場での下準備。糸をそろえたり柄を変えたり。イロハのイから教わった。マニュアル本はない。大変だけど、一つの完成品を作るやりがいがある」
 機屋は各自の“得意分野”がある。後藤は伝統的工芸品の丸帯や七五三の祝い帯などの正装だ。
 「柄付けの仕方や色使いなど、オリジナリティーを持ち続けたい。今は着回しのリサイクルや何十年前の古着もある。独自色を持つことが差別化につながる」と考える。
 「消費者アンケートを見ると、着物を着たいという女性は多い。市内の他の機屋とも協力して、着物を着やすい環境を整えたい。地域の人にも地場産業の魅力をもう一度確認してもらいたい」
 着物を着る機会は結婚式や成人式、七五三などに限られる。「和装は洋服より面倒とか、無くても足りてしまうという風潮もある。でも、着てみると着心地は良い。背筋がピンとして身が引き締まる。子供たちも七五三で晴れ着を着ると、顔が大人になる」
 「和装は絹があってこそ。絹は生きもの。冬と夏は様子が違い、細かい気配りが必要だが、合成繊維にない味がある」
 長女、英恵ちゃん(11)、次女、千晶ちゃん(8)、長男、駿太君(6)の三人の子供がいる。
 「子供が大人になり、跡を継ぐ選択肢を残せるようにしたい。私は着物が好き。日本人なんだから」

(桐生支局 五十嵐啓介)