絹人往来

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最後の一軒 「生きがい」休まず70年 近藤 源次郎さん(76) 富士見村皆沢 掲載日:2007/06/27


蚕に情熱を注ぎ続ける近藤さん。手にするのは蚕と桑にかぶせるネット
蚕に情熱を注ぎ続ける近藤さん。手にするのは蚕と桑にかぶせるネット

 「小学校に上がる前、5、6歳のころには、もう父母を手伝って蚕をやっていた。それから70年間、1度も蚕を休んだ年はないなあ。蚕が生きがいなんだね」
 養蚕農家の家庭に生まれ、休むことなく、養蚕を続けてきたことが大きな誇りだ。皆沢地区で、唯一養蚕を続けている。
 「これまでで特に大変だった時期は戦争中。無理やり桑を抜かされ、サツマイモをつくれ、という時代。あのころの桑は本当に大切だった。でも蚕は1番お金になったし、蚕だけはやめなかった。その時も年に2、3回はやっていた」。
 意識することなく、父母の仕事を見よう見まねで覚えていったという。
 「今は住宅と蚕をやる場所は別だけど、昔は蚕と一緒に寝起きしていた。知らないうちに仕事も覚えたし、蚕のことも分かるようになったんだ」
 収繭量のピークは、約1300キロだった20年ほど前。その当時、1000キロを超える年が4年間続いた。今でも年間では700キロ以上を維持している。
 「養蚕中心できたが、酪農と兼業した時期もあった。25歳ごろ、酪農も始めたんだ。当時は乳価が良かったけど、5年でやめた。やっぱり蚕が1番だと思ったよ。酪農は1年中休みがないけど、蚕は休める時期があるのも良かった」
 これまで続けられたのは、50年間連れ添う妻、年子さん(73)の存在が大きく、仕事の上でも互いに欠かせないパートナーとなっている。
 「女房が蚕を好きなんだ。『疲れたから、年4回を半分の2回ぐらいにするか』って聞くと、『やれるうちはまだまだ』と必ず答える。蚕を飼っている時は、夜寝る前、もう1回蚕を見て回るんだ。感心しているよ。ありがたいよ」
 「蚕を無我夢中でやってきて本当に良かったと思うよ。体の続くうちは続けたい」

(前橋支局 須藤拓生)