機織り講座 こつこつ理解広める 戸部 和江さん(78) 渋川市北橘町箱田 掲載日:2007/08/22
「機織りという地域の伝統文化を引き継いでくれる人がいてうれしい」と話す戸部さん
「トントンカラカラという機音にひかれて、毎年受講生が集まってきてくれる。養蚕、機織りという地域の文化を次の世代が引き継いでくれるのがうれしい」
機織り講座は、旧北橘村教委が1998年にスタートさせた。この時の1期生6人の1人で、昨年の合併後は渋川市教委に引き継がれた講座の指導役兼束ね役の「はた織りの会」会長を務めている。
「機織りの経験はないが、北橘は養蚕や機織りが盛んで、父が農協退職後、糸の仲買人をしたから養蚕は身近な存在だった。蚕を育て、糸を引き、それを織って着物を作るということは素晴らしい」
1期生として参加した講座は地域に伝わる獅子舞の衣装が古くなったため、機織り経験者に織ってもらおうと企画された。当時の区長が「織姫になってほしい」と元養蚕農家の女性に声をかけ受講生を選定した。
約30年間の教師経験や人を束ねる力が買われ「織姫」を要請された。他のメンバーが織る横で、織るのに必要な横糸を管巻きで巻く作業に精を出したほか、お茶の準備など裏方を担当した。
2回目以降の講座は織姫が講師となり、公募で集まった地域の女性に指導。ここでも講座がスムーズに運営されるよう、簡単な織り方指導に加え、雑用も一手に引き受けた。
また、講座を充実させるアイデアを出した。機織りの理解を深めるため、富岡製糸場など養蚕関係の施設見学を定着させた。織り上げた布で100歳を迎えた人にちゃんちゃんこを作ってプレゼントしたり、受講生に自ら織った布でバッグや帽子を作らせ、村の文化祭に出品、機織り講座の成果を積極的にアピールした。
講座のスタート当初は小学校の空き教室を使用していたため、関心を示した子供たちに、「鶴の恩がえし」の話をしながら機織りについて説明。養蚕への理解を広めるための種をこつこつとまいていった。
受講生は9年間で約100人に上り、当初からの参加者は指導者に育った。6人の織姫のうち、今も携わっているのは2人だけ。引退を考える時もあるが「毎回笑顔で迎えてくれる戸部さんの姿がないと寂しい」という受講生の声に後押しされ、通い続けている。