養蚕の集落後世に 重伝建 家泉 博さん(59) 伊勢崎市除ケ町 掲載日:2007/12/15
伝統的な建物の魅力について強調する家泉さん
太田市の事務所を拠点に、伝統的建物や住宅の良さを伝えようと、古い民家の調査をライフワークとする建築士として活動。養蚕農家の家屋が建ち並び、重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に選定された六合村赤岩地区の調査、修復にかかわっている。
「日本の住宅は20、30年たつと傷んでしまい、建て直すケースが多い。一般住宅の設計を職業にしていたが、40歳を過ぎ、後世に残せる建物への関心が高まって県内各地を見て回っている」
赤岩地区は、江戸から昭和初期にかけて盛んだった養蚕農家の造りを現代に伝えている。日本でも数少ない「土蔵造り」といわれる建物が残り、「熱効率が良く、夏涼しくて冬暖かい。養蚕をするのに好条件がそろっている」と高く評価する。
地元住民と建築士が連携して作成し、2002年1月に文化庁に提出された「六合村・赤岩基礎調査報告書」は重伝建選定に道筋を付けた。作成の中心メンバーとして1年半にわたって、地区を歩いた。
「赤岩地区は明治30年代に養蚕を主目的に造られた建物が多い。今後の日本住宅の在り方を考える上で、こうした古い建物の価値を見いだしていかなくてはならないと考えた」
重伝建選定後は傷んだ建物を、年2棟ペースで修復する作業を手掛ける。
「設計図を描き、保存方法を決める。しかし、住宅を長持ちさせるには、何よりそこに住んでいる人の意識が大事。きちんと暮らし、使っていくことが不可欠」
赤岩地区の建造物の特徴として、土台はクリ、柱はスギ、梁(はり)はマツなどと“適材適所”の木材が配置されている点を強調する。
「昔は、『どうしたら家を長持ちさせられるか』ということに重点を置き、家を建てた。現代はその考え方が変わってしまったんだね」
赤岩地区がある六合村は県内有数の過疎地域。重伝建選定をきっかけに、村の活性化につながればとの思いは強い。
「赤岩の養蚕作業場を使って養蚕をやってみたいという、外部の人も出てきている。目的に応じた使い方をすれば、あと半世紀は持つだろう」